指定石材店制度

目次

あまりよく知られていない霊園の「指定石材店制度」

指定石材店制度とは?

現在、多くの民営霊園では「指定石材店制度」とよばれる、墓所販売のためのシステムが採用されています。

一般の消費者の方々にとっては、あまり聞きなれない言葉だと思いますが、この指定石材店制度とは、その霊園に墓所を購入してお墓を建てたいと思った場合には、その霊園の指定された石材店のいずれかで、お墓を建てなければならないという決まりのことです。

つまり、指定石材店制度が採用されている霊園では、お墓を建てるときにその霊園から指定された業者の中から、自分のお墓のデザインや施工工事を請け負ってくれる石材店を選らばなければなりません。

指定業者の数は霊園の規模などによって違いますが、数社から、多い所では二十数社にも及びます。
指定業者以外の石材店でお墓を建てることは認められておりません。

霊園内の”待機所”

しかし、ここでひとつ注意が必要です。
ほとんどの霊園では、霊園を訪れた時に消費者側から石材店を指定したり、特定の業者のチラシ(もしくは広告)を持参していったりしない限り、霊園側で自動的に担当する石材店を振り分ける仕組みになっています。

霊園の見学に訪れて、墓所の購入を希望する消費者が、その時点で数ある石材店の中から気に入った石材店を選んでお墓づくりを依頼する訳ではなく、見学のために霊園を訪れたその瞬間に、消費者の意思に関係なく、担当する石材店が自動的に振り分けられるのです。

多くの民営霊園には、霊園の維持管理業務や事務作業を行うための管理棟があります。
管理棟の中には、霊園のスタッフが常駐しているのが普通です。

また、霊園の敷地内には管理棟の他に、指定業者の営業担当者が詰めておくための設備がある場合があります。
霊園の墓所が完売してしまえば営業担当者が常駐する必要がなくなるため、そうした設備はプレハブのような簡易な物の場合が多く、霊園によっては日除けテントの下に、折りたたみ式の長机とパイプいすを置いてあるだけというところもあります。

管理棟の内部に営業担当者が詰めておくための部屋があるケースもあります。

「ご見学ですか?」に注意

過去に霊園の見学をされたことのある方ならご経験がおありかと思いますが、消費者の方々が霊園を訪れると、前述の”詰め所”から霊園の資料を持った営業マンが現れ、「ご見学ですか?」と声をかけてきます。

そして「チラシはお持ちですか?」などと聞かれます。

この時に消費者側から石材店を指定したり、特定の業者のチラシを持って行かなかった場合、声をかけてきた担当者の石材店が、自動的に見学者のお墓を担当することになります。(これを仮に「A石材店」とします)

この決定には消費者側の意思は関係ありません。
極めて一方的に決定されてしまうのです。

一旦、担当の石材店が決まると、消費者がその霊園にお墓を建てようとするとき、お墓の施工を請け負うのは必ずA石材店となります。

工事の価格や墓石材の値段、お墓のデザインなどが気に入らず、担当石材店を変更したいと思っても、指定石材店制度が採用されている霊園では変更は認められません。

A石材店と他の石材店を比較するために、相見積り(※)をとることも認められないのです。
消費者がどうしてもA石材店ではお墓を建てたくないと考えた場合、もうその霊園に墓所を購入することは実質的に不可能になります。

A石材店と縁を切るためには、霊園そのものを変更しなければなりません。
これはとても不自然なことではないでしょうか。

※相見積り…複数の取引先などに同条件で見積りを提出させ比較すること。あいみつ。

指定石材店制度の問題点

ここで指定石材店制度が抱える問題点を、消費者側からみた場合について考えてみます。

霊園の指定石材店名が、見学者から分かりやすい場所に明示されていない。

一部の民営霊園では管理棟の入口や霊園内に指定石材店の社名が書かれたプレートや看板等を掲げている場合もありますが、ほとんどの霊園では、石材店名が分からないように、社名が伏せられているのが現状です。

来園した見学者を担当する石材店の順番が、売り手側の都合で事前に決められている。

先ほどでも述べたように、霊園内の待機所では各石材店の営業担当者が、見学者の来園を待ち構えています。
そして、来園した見学者をどの石材店が担当するかは、石材店同士で取り決めた順番によって決定されます。
そこに消費者側の意思は反映されません。

霊園に参画している石材店の規模・力量・キャリア・実績にバラつきがある。

一つの民営霊園に参画している石材店は、数社から二十数社にもなります。

それらの石材店は、社長自らが石材の選定から製作・販売に至るまでをにない、従業員が数人という小規模な会社もあれば、全国チェーン展開をしている企業まで、その規模はさまざまです。

もちろん、それらの会社が作る墓石の品質や工事内容、営業マンの力量等もバラバラです。
なのに、それらが同等の資格を有しているところに問題があるのです。

消費者の意思で担当の石材店を変更できない。他社と比較検討することも認められない。

売り手側の「順番」によって担当石材店が決まってしまうと、その霊園ではその石材店以外の業者では、お墓を建てることができなくなります。
担当者の態度が悪い、知識が乏しい、説明が不明瞭、見積りの価格が不透明などの理由で、消費者側が石材店を変更したいと希望しても認められません。

そればかりか、施工工事価格の違いや、墓石のデザインの優劣を他社と比較することすらできないのです。

消費者庁の「6つの原則」

平成21年9月1日、新しい省庁である消費者庁が発足しました。
これは、消費者の観点から政策全般を監視する組織の実現を目指して設置された組織です。

新組織の設立にあたっては、消費者の立場を尊重した指導・監督を行うために、以下の6つの原則が打ち出されました。

消費者庁が掲げる6つの原則

  • 消費者にとって便利で分かりやすい。
  • 消費者がメリットを十分実感できる。
  • 迅速な対応。
  • 専門性の確保。
  • 透明性の確保。
  • 効率性の確保。

この原則の注目ポイントは企業側に対して、消費者にとって利便性が高く、メリットを十分に実感できる企業活動を目指すことを促そうとしている点でしょう。

消費者庁設置の必要性を訴えた福田首相(当時)も、平成20年1月18日の施政方針演説の中で「これまでの生産者・供給者の立場からつくられた法律、制度、さらには行政や政治を、国民本位のものに改めなければなりません」と述べています。

つまり、これまで供給者側(企業)の立場にたち、既得権益を優先するというかたちで政策が展開されてきたことを反省し、今後はより消費者側の視点に立ったやり方に転換していかなければならないということです。

このあらゆるサービスの基本的な前提である「消費者の視点に立つ」という観点から、指定石材店制度というシステムを眺めた場合、この仕組みは果たして消費者のためになっていると言えるでしょうか。

霊園に参画している石材店名を見学者の目につく場所に掲示しないことは、消費者にとって「分かりやすい」でしょうか。

霊園見学に訪れた際に、業者側の都合で決められた順番で担当石材店が一方的に割り振られ、変更も他社との比較検討もできないという現実は、消費者が十分に「利益を享受している」と言えるでしょうか。

透明性や、建墓希望者にとっての効率性は確保されているでしょうか。
決してそうとは言えないでしょう。
むしろ、消費者にとっての不利益となってる側面が多いのではないでしょうか。

指定石材店制度に関するトラブルの実例

民営霊園の指定石材店制度は、その制度の存在そのものが、消費者に知られてない(あえて知らせていない?)ことから、何も知らずに霊園の見学に訪れた建墓希望者がトラブルに遭うことも少なくありません。

ここでは、そんなトラブルの実例を紹介いたします。

事例1 石材店が不満だが変更できない!

見学の際に一方的に割り振られた担当石材店の社長と営業マンの接客態度が悪い。
時間の約束を守らないなどの不手際もあり、石材店を変更したいと申し出たら、「それは無理だ。どうしても嫌なら、もうここでお墓を建てることはできない」と言われた。納得できない。

市内に住む40代の女性が経験された事例です。
石材店についての知識が無いまま、見学のために霊園を訪れたところ、その「態度が悪い」業者が担当に決められてしまったということです。
その後、彼女はその霊園にお墓を建立することをあきらめたそうです。

事例2 指定業者の見積もりが高額でびっくり!

石材店に勤めている親戚がいるので、自分のお墓はその会社で建てようと考えていましたが、霊園の管理者から「指定業者以外は工事をしてはいけない」と言われた。
指定の業者で見積りをとったところ、非常に高額で驚いている。

市内の霊園を見学されたという男性の事例です。
この男性の場合、事前に親戚が勤める石材店でお墓の見積りをしてもらっていたそうなのですが、指定業者が見積もった金額は、その二倍近い金額だったとのことです。
なぜ金額にこんな開きがあるのか理解ができず、また、他の指定業者との比較もできないので困り果てているそうです。

事例3 デザイン墓石が建てられない!

オリジナルデザインのお墓を建てたいと考えていたが、霊園の指定業者から「お墓の形はカタログに載せている3種類の中からしか選べない」と言われた。
自分なりのお墓のイメージを伝えたが、「うちではできない」の一点張り。
他の指定業者の中には、要望に応じてくれるところもあるようだが……。

ある主婦の方から寄せられた事例です。
なんでもその石材店にはオリジナルデザインのお墓を提案できるスタッフがおらず、また、使用できる石材の種類も限られているため、彼女が希望するデザイン墓石には対応ができないと言われたそうです。
同じ霊園の中に入っている指定業者の中には、オリジナルデザイン墓石の製作を得意としている石材店があることを後になって知りましたが、業者の変更は認められず、事前に下調べをして行かなかったことを後悔しているということでした。

トラブルに遭わないために……

なぜ多くの民営霊園では、指定石材店制度が採用されているのでしょうか。

それには霊園の開発や造成には億単位の多額の費用が必要なことから、経営主体である宗教法人(通常は寺院)や財団法人だけでは資金がまかなえず、複数の業者から援助を受けて開発がおこなわれることや、霊園開発後の管理や運営面でも石材店のサポートが必要なこと、などの理由があります。

指定石材店制度があることによる消費者側のメリットとしては、墓石用の石材や施工工事のことで何か問題が生じたときに、当事者である石材店とともに、その業者を指定した霊園側にも責任を問える(当事者のみによる話し合いではなく、霊園の経営主体も巻き込んだ協議ができる)ということもありますが、前述でも指摘したように、消費者側から石材店を選ぶ権利を奪っていることや、この制度の存在そのものが周知徹底されていないことによるマイナス面の方が大きいと言えるでしょう。

以下に指定石材店制度に関するトラブルを回避するための方法を挙げてみました。

①霊園に参画している石材店を(指定業者)を事前にチェックしておく。

霊園見学へ行く前に、電話での問い合わせやインターネットで霊園の指定業者を調べておきましょう。
意中の石材店があれば、見学の際にその業者に霊園へ同行をしてもらうか、霊園内で待ち合わせるようにします。

②霊園見学の時に、名前・住所・電話番号などの個人情報を教えない。

霊園見学へ行くと、対応した業者の営業担当者が、必ず名前や住所等を専用の用紙に記入するよう求めてきます。
その際、安易に個人情報を教えると、その対応した営業マンの業者が担当石材店に決定されてしまいます。

③「おかしい」と感じたら、すぐに相談する。

霊園に参画している指定石材店各社の墓石の品質や工事内容、営業マンの力量等にはバラつきがあります。
担当石材店と建墓を進めていく過程で、少しでもおかしいと感じたら、すぐに霊園側に相談して解決を図りましょう。

※参考文献:「霊園ガイド・2011夏号」(株式会社六月書房発行)

  • お墓(墓石)の価格相場がわからない
  • 購入経験がないだけに、お墓(墓石)というものがわからない
  • 墓地を探している
  • 郷里のお墓を現在の住まいの近くにお引越し(改葬)したい
  • 営業や売り込みではなく、中立的な立場の意見が聞きたい

常にご相談者様のことを第一に考え、
特定の考え方に偏ることなく「良いモノは良い!」「悪いモノは悪い!」の姿勢でアドバイス。
お墓のことなら、日本石材産業協会認定
「お墓ディレクター」が在籍している
兵庫県知事認可団体の
「神戸市石材企業協同組合」へご相談ください。

しつこい営業は一切行っておりません。
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この記事を書いた人

私たちは常にお客様の立場でお墓づくりを考え、「良いものは良い!」「悪いものは悪い!」の姿勢で、極めて中立的な立場で判断し、的確なアドバイスをさせていただきます。

【役職・資格など】
・ 株式会社第一石材 代表取締役 
・ 神戸市石材企業協同組合 代表理事(理事長)
・ (一社)日本石材産業協会 理事
・ (一社)日本石材産業協会 近畿地区長
・ (一社)日本石材産業協会認定 1級「お墓ディレクター」 [認定番号:05-100110-02]

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